モキュメンタリーホラー小説 梨著「かわいそ笑」を紹介・レビュー※微ネタバレ含む|深淵の記録:12
みなさま、ようこそ深淵境界線へ。
案内人のフチと申します。
今回お見せする深淵はホラー小説「かわいそ笑」です。
著者である梨氏の単独での著書としてのデビュー作品であり代表作です。
著者の体験したことを読者も巻き込んで語られる、モキュメンタリー形式の作風ではありますが、どこか少し独特な雰囲気を感じる作品となっています。
- 「かわいそ笑」とはどのような小説か
- この小説「かわいそ笑」がオススメな人
- 著者:梨(なし)氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
- 「かわいそ笑」と併せておすすめできる作品
それではともに深淵を覗いていきましょう。
「かわいそ笑」とは
- タイトル:「かわいそ笑」
- 著者:梨
- 発売日:2022年8月7日
- 出版社:イースト・プレス
- サイズ:単行本
- ページ数:192ページ
- 価格:定価 1650円(税込み)
唯一無二の世界観を持つ、ホラー作家梨氏がデビュー作品として世に放つホラー好きのための作品です。
「かわいそ笑」のあらすじ
「死んだ人のことはちゃんと可哀想にしてあげなきゃ駄目でしょう。」
一度読んだら引き返せない、怪異が侵食する恐怖のネット怪談。インターネット上に伝わる多くの怪談。
その中に何故か特定の「あの子」が被害にあう奇妙な怪談が出回っていた。とある掲示板のQRコード、インタビューの書き起こし、出典不明な心霊写真、匿名のメールデータ。
筆者がこれまでに収集した情報をもとに怪談を読み解く、読者参加型のホラーモキュメンタリー。
一見バラバラに見える情報から、浮かび上がってくる「ネット怪談の裏側の物語」とは。──「もうやり直せないよ 残念でした」
※公式のあらすじを引用
「かわいそ笑」の感想・見どころ
※以下、ややネタバレを含みます。
ナレーションや作中の語り手ではなく、「梨」として語る唯一無二のスタイル
現代のモキュメンタリーホラーブームで数々の作品が生まれてい
語り手が著者の形式の作品は数あれど、ナレーションのように話す、手記のように
実際に話を聞いた相手の文章すらも、そこに体験者が同じように存在していて話している
小説として読むのではなく、今目の前の人物から怖い話を聞
SNSアカウント、QRコード、現代的ギミックをふんだんに使った新しい令和の怪談
梨氏は本書執筆時点で22歳、2026年現在でも26歳と昨今話
それは、梨氏自身が影響を受けた洒落怖をはじめとしたネット怪談を作品に引用しつつもSNSによる拡散、QRコードを用いて手元
「横次鈴」という人物が繋げる怪談の止まらない恐怖の連鎖
本作のあらすじにも記載のある「あの子」こと「横次鈴」。
彼女こそ本作のキーパーソンでありキーワードとなっており、別々のネット怪談にも関わらず、それぞれの根底で繋がっている感覚
読者が手のひらの上で転がされていた真実
最後に待ち受ける結末は、誰しもが途中で描いていた不気味さ不可
同時に著者である梨氏も、この怪談に触れたことで呪いの渦
著者:梨のプロフィール
- 名前:梨(なし)
- 経歴:2000年4月20日生 長崎県出身
幼少期よりホラー作品、とりわけネット怪談への興味を示し、2ch板の洒落怖(死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?) に作品の投稿を開始する。
2015年にはSCP財団に登録し2022年に『SCP-511-JP – けりよ』、『しんに』で高評価を取得。
同時にnoteやオモコロにて自作小説を書き続け2022年に、22歳の若さで小説家・漫画原作デビューを果たした新進気鋭、新 世代を代表するホラー作家の一人だ。
特徴は恐怖感よりも不快感を残す描写と文章表現、加えて非常に執筆ペースが早いことと、2024年に「行方不明展」、 2025年には「恐怖心展」といった体験型ホラー展覧会を開催し て大きな話題も呼んだことからもわかる通り広いジャンルに向けた 活動を行っている。
著者:梨の別作品
ここにひとつの□がある」/ 角川ホラー文庫(2024年)
こちらの作品は読み手側が作品にどこまで心酔できるか、という度量を求められてい
数々の「□」にまつわる短編集が指し示す結末を、是非その目で見届
考察の沼にハマる勇気がある方は是非ご一読ください…。
「コワい話は≠くだけで。」/KADOKAWA(2022年~2024年)全3巻
梨氏が22歳という若さで原作を担当したモキュメンタリ―ホラー漫画作品の傑作。
自身の書籍に図や写真を使う傾向の強い梨氏だからこそ、漫画だからできる表現というものを計算して表現されている作品となっています。
怪談を取材して漫画にすることになった漫画家景山五月氏(作画担当)が回を追うごとに取材することによる影響を受けていくこととなる様子は、ただのフィクションとは思えない作品となっています。
完結済み全3巻ですので適度なボリュームながら良質な恐怖体験を是非、お楽しみください…。
「6」/玄光社(2023年)
このホラーがすごい!2024年にて国内作品11位を獲得したことで話題を呼んだ本作。
「かわいそ笑」と通ずる、書籍という媒体を通じて読者を世界観に無理やり引きずり込むようなスタイルはあるものの、日常をテーマとした「かわいそ笑」とはまた異なるSFをも思わせる6つの物語の先に待つ恐怖を体感できる作品となっています。
「かわいそ笑」と併せておすすめしたい作品はこちら
「かわいそ笑」と同様のモキュメンタリーホラー小説作品をご紹介いたします。
著:雨穴 「変な家」/飛鳥新社(2021年)
とある一戸建ての間取り図の違和感から始まるモキュメンタリーミステリー作品。
2020年10月12日にウェブメディアのオモコロに投稿された後、YouTubeで本人出演の動画を公開するなどその独特の切り口や手法で大きな話題となり書籍、漫画など多くのメディアミックス展開し、謎解き要素と不気味な雰囲気で大ヒットし、2024年に映画化され多くの層に注目を集めた現代モキュメンタリ―作品の代表作です。
著:背筋「近畿地方のある場所について」/KADOKAWA(2023年)
ホラー小説家の背筋氏のデビュー作にして代表作であるモキュメンタリ―ホラー作品です。
2024年版「このホラーがすごい!」国内編1位を獲得していることからもわかるように非常に評価が高く、2020年代のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)ホラーの傑作のひとつであり、感染系ホラー作品としての完成度の高さも凄まじいです。
雨穴氏と同じく、令和のホラーブームの中心人物として梨氏と三つ巴の対談をされたことから、是非合わせて注目したい著者であり作品です。
著:小野 不由美「残穢」/新潮社(2012年)
モキュメンタリ―ホラー小説の代表作とも言える、小野 不由美氏の著書。
モキュメンタリ―に限らず、本当に怖いホラー小説としてしばしば最高傑作と称されることもある作品です。
「かわいそ笑」と通ずる読者をも巻き込んだホラー作品としての恐怖がそこにはあります。
著:阿澄思惟「忌録: document X」/Kindle販売のみ(2014年)
匿名作家の阿澄思惟(あすみしい)氏による、Kindleのみで販売されているモキュメンタリーホラーオムニバス作品です。
本作は梨氏自身が最も影響を受けた作品としても挙げられており、小説作品というよりもインタビュー、音声記録、過去の事件記事などを断片的に集めて構成されているものになっており、電子書籍媒体だからこそできる要素をふんだんに使われています。
この構成は今回紹介した「かわいそ笑」に非常に深く通ずるものが見られます。
本作はKindleでしか読むことができませんので、Amazonでの購入、もしくはKindle Unlimited 無料体験をご利用いただければ30日間無料で読むことができます。
本作をはじめ、他作品もUnlimited対象作品がございますのでこの機会にご利用いただくのもよいでしょう。
それでは、本日の深淵の案内はここまで。
無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。
ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。
また、この場所でお待ちしております…。







