モキュメンタリーホラー小説 背筋著「近畿地方のある場所について」を紹介・レビュー※微ネタバレ含む|深淵の記録:1
みなさま、ようこそ深淵境界線へ。
案内人のフチと申します。
今回お見せする深淵は小説「近畿地方のある場所について」です。
背筋氏のデビュー作であり、代表作である本作品はホラー好きをはじめ、多くの人に手放しでおすすめしたい、現時点で2020年代のモキュメンタリーホラー作品の最高傑
ホラージャンルが好きな方ならまず、手放しでおすすめしたい作品で
- 「近畿地方のある場所について」とはどのような小説か
- 著者:背筋氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
- 「近畿地方のある場所について」が好きな方におすすめできる作品
それではともに深淵を覗いていきましょう。
「近畿地方のある場所について」とは
「近畿地方のある場所について」はホラー小説家の背筋氏のデビュー作にして代表作であるモキュメンタリ―ホラー作品です。
- タイトル:「近畿地方のある場所について」
- 著者:背筋
- 発売日:単行本/2023年8月30日
- 出版社:KADOKAWA
- サイズ:単行本
- ページ数:321ページ
- 価格:定価 1,430円(税込み)
- 受賞歴:2024年版「このホラーがすごい!」国内編1位を獲
- その他情報:2023年1月 小説投稿サイト「カクヨム」に投稿を開始しすぐさま話題となる
同年8月に単行本として書籍化、11月には漫画版が連載開始
2025年8月 文庫版が発売し劇場映画が公開される
作品が公開されて以降、非常に早く多くのメディアミックスを経て評価されている作品です。
無料公開されているカクヨム版はこちらからご覧になれます。
https://kakuyomu.jp/works/16817330652495155185
「近畿地方のある場所について」のあらすじ
雑誌編集者をしている著者「私(背筋)」の友人である若手ライターの小沢が突然行方をくらませた。
彼はどうやら新しい記事の題材にとある場所にまつわる内容を調べていたらしい。そこは「近畿地方のある場所」とまでしかわからないが、彼の残した情報を手掛かりに調査を行い、それを公開することでこれを読んでいる読者から情報を提供してもらえる、ゆくゆくは彼の行方を掴めるのではないかと考えた「私」。調査を行う中で様々な事件や情報が結びついてゆき、そして「近畿地方のある場所」がどこにあるのかが徐々に明らかになっていく。
しかし、その進む先で直面する恐ろしい事実。
そして物語の結末を、知った時に著者と読者が目にするものとは一体⋯。
「近畿地方のある場所について」の感想・見どころ
現時点で2020年代のモキュメンタリ―ホラーの最高傑作のひとつ
本作は2020年代のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)ホラーの傑作のひとつであると言えます。
2012年に刊行され、現代的なアプローチをしたことで大きな話題を呼んだ、こちらもモキュメンタリ―ホラー小説の傑作である小野不由美氏:著の「残穢」の流れをくみつつ、さらに2020年代のインターネット社会特有の要素を盛り込んだ今作はまさに新しいモキュメンタリ―ホラーの形を作ったと言えます。
2020年代のSNS社会の要素を取り込んだ進化系のモキュメンタリ―
冒頭のネット怪談、過去に起きた女児行方不明事件の2つの話が提示された後に、著者(背筋)がこの文章は失踪した友人の残した内容を記すことでその足取りを追っているという形で情報の呼びかけを行っていること、その過程を著者の現在進行形で記される日記を読むかのような内容が展開されていくストーリーとなっています。
なぜ情報を読者に呼びかけるのか、なぜこんなことになったのか、読み進めていくうちにどんどんと引き込まれてゆき、その時点で読み手側もこの作品を構成する一部であることに気づき、その頃にはもう手遅れとなっている…。
地域に根付く土着信仰、そこに住む人々の感情、その謎への探究心が生み出す恐怖と叙述トリックによる読み手への裏切りは鳥肌物です。
読者の先入観を巧妙に利用したミスリードを誘う仕掛けと真相
モキュメンタリ―ホラーの特性上、話を話している前提でストーリーが進んでいく構成ですが、あえて説明されていない情報によって読者のミスリードを巧妙に誘う仕掛けがなされています。
そして、その仕掛けが発動するのは物語の結末になります。
真相を知ったときに恐怖としてすべての伏線が回収されるようになっています。
著者:背筋のプロフィール
- 名前:背筋(せすじ)
- 経歴:2023年1月に小説投稿サイト「カクヨム」にてネット版「近畿地方のある場所について」を投稿し話題に。同年8月に書籍化し小説家デビューを果たす。
同作は2024年「このホラーがすごい!」国内編1位を獲得し、ホラー作家としての地位を確立。
ホラーゲーム「SIREN」のシナリオライター佐藤直子、映像監督の西山将貴とともにホラーユニット「バミューダ3」を結成し、2025年夏には世紀末を題材にした体験型展示イベントである「1999展 -存在しないあの日の記憶-」を開催し、これも大きな話題を呼んだ。
著者:背筋の別作品
KADOKAWA:穢れた聖地巡礼について
背筋による二作目の単行本版作品です。
あらすじ
ふとしたことで仕事をともにする心霊系YouTuberとフリーライターの間でとある心霊スポット(聖地)を舞台に起こる怪奇と暴かれる過去の惨劇の行く末とは…。
「近畿地方のある場所について」同様に、土地や場所を舞台にした作品であるが物語作品としてまた違う楽しみ方で読めるホラー小説となっています。
ポプラ社:口に関するアンケート
縦115ミリ×横85ミリの小さなサイズ感と63ページという短編に恐怖を詰め込んだ衝撃ホラー作品。
あらすじ
心霊スポットされる墓地で肝試しを行う大学生4人。そのうちの1人が翌日失踪してしまう。
後にその場所を訪れて怪奇現象に出くわしたオカルト研究会の大学生2人も、その事件に関わることとなり、失踪者を除く5名それぞれの証言を展開していく形で物語が始まる。
登場人物のインタビューが主体となる形のお話ですが、最後の「口に関するアンケート」のページを読むまで真相がわからない構成はすさまじいです。
「近畿地方のある場所について」好きならおすすめしたい作品はこちら
著:小野 不由美「残穢」/新潮社(2012年)
モキュメンタリ―ホラー小説の代表作とも言える、小野 不由美氏の著書。
上述の通り著者の背筋氏も影響を受けた作品となっており、土地というものをテーマにした怪異について調べていくモキュメンタリ―ホラー作品です。
モキュメンタリ―に限らず、本当に怖いホラー小説としてしばしば最高傑作と称されることもある作品です。
この作品の真の恐怖は、読み終えた後まで続く他人事ではなかったという絶望感です。
著:雨穴 「変な家」/飛鳥新社(2021年)
とある一戸建ての間取り図の違和感から始まるモキュメンタリーミステリー作品。
2020年10月12日にウェブメディアのオモコロに投稿された後、YouTubeで本人出演の動画を公開するなどその独特の切り口や手法で大きな話題となり書籍、漫画など多くのメディアミックス展開し、謎解き要素と不気味な雰囲気で大ヒットし、2024年に映画化され多くの層に注目を集めた現代モキュメンタリ―作品の代表作です。
著:梨「かわいそ笑」/イースト・プレス(2022年)
新進気鋭のホラー作家、梨氏の衝撃のデビュー作。
現代のネット怪談を紹介するような形でありながら、映画「着信アリ」や「リング」に代表されるジャパニーズホラー、伝播系ホラーの要素も多分に含み、読者に語り掛けるかのように展開されていくストーリーは気づいたらその世界の中に入り込んでしまう独特の雰囲気があります。
「近畿地方のある場所について」のように、最後まで読んだときにもう手遅れだったと気づかされる恐怖をご体験ください。
著:原浩「身から出た闇」/角川ホラー文庫(2025年)
著者自身の執筆活動の中で起きたことを記録したモキュメンタリ―ホラーであり、そのジャンルの傑作のひとつと言える作品です。
著者の作中作創作短編集と連動する形で担当編集者3人に降り注ぐ恐怖と、角川ホラー文庫そのものを題材としたメタさがこの作品の醍醐味です。
序章、終章、あらすじすべてを含めてこの作品の異質さは後を引きます。
この作品こそ、読者が望んだ作品なのです。
著:背筋「近畿地方のある場所について(文庫版)」/KADOKAWA(2025年)
本作を読まれたら、こちらを読まないことはもうあり得ません…。
本記事でご紹介した作品「近畿地方のある場所について」はカクヨム版およびそれをもとに再編されたいわゆる単行本版です。
ですがこちらは文庫版という体を用いた単行本版とは全く別のお話。
単行本版を読んだ人間にしか生まれない、新たな恐怖を是非体験していただきたく思います。
それでは、本日の深淵の案内はここまで。
無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。
ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。
また、この場所でお待ちしております…。





