モキュメンタリー不動産ミステリー小説 雨穴著「変な家」を紹介・レビュー※微ネタバレ含む|深淵の記録:11
みなさま、ようこそ深淵境界線へ。
案内人のフチと申します。
今回お見せする深淵は小説「変な家」です。
謎や違和感への考察からミステリー小説としての売り出しはしていますが、一種のヒトコワ、ホラージャンルにも含まれる作品です。
2020年代の始まりを象徴するモキュメンタリー小説の最高傑作の一冊と言っても過言ではないです。
面白いミステリーやゾッとする作品を見たいなら、まずはこの作品を手放しでオススメいたします。
- 「変な家」とはどのような小説か
- この小説「変な家」がオススメな人
- 著者:雨穴氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
- 「変な家」が好きな方におすすめできる作品
それではともに深淵を覗いていきましょう。
「変な家」とは
- タイトル:「変な家」
- 著者:雨穴
- 発売日:単行本/2021年7月22日、文庫本/2024年1月31日
- 出版社:飛鳥新社
- サイズ:単行本/文庫本
- ページ数:単行本/248ページ、文庫本/256ページ
- 価格:単行本/定価 1,400円(税込み)、文庫本/定価 770円(税込み)
- 受賞歴:オリコン年間文庫ランキング 2025年1位
累計発行部数 250万部以上
仮面をつけた謎のホラー作家である雨穴氏による間取りをテーマとしたミステリー作
雨穴氏自身が実際に体験した話として展開される、モキュメンタ
その斬新な設定から、2020年に10月にwebメディアのオモコロへの投稿と雨穴氏自身のYouTubeチャンネルに動画がアップされるやいや話題
また、雨穴氏のYouTubeチャンネルでは本編冒頭1章が、2
漫画化や劇場映画化などのメディアミックスもされており、様々な
「変な家」のあらすじ
オカルト専門フリーライターである著者の「雨穴」の下には、職業柄様々な怪談や怖い体験談などが舞い込んでくる。
そんな中で知人の「柳岡さん」から購入を検討しているという、とある一軒家の間取りについて相談を受ける。
中古物件ながら築年数わずか1年であるため魅力を感じる反面その間取り、とりわけ1階キッチン部分の壁にある謎の空白に気味悪さを感じるということであった。
相談を受けた「雨穴」は知り合いで建築士である「栗原氏」に相談をしてみることに。
建築士である栗原氏特有の目線で、空白以外にも間取りに潜む違和感を次々と見つけていき、一つの恐ろしい仮説を導き出す。
その仮説を話す前に「柳岡さん」はその家の近くで遺体が発見されたことを理由に購入をやめたことを告げられる。
担当編集者にそのことを話すと面白い題材になるので記事にするのはどうかと提案されて公開すると、「宮江柚希」という人物から「その家の前の住人に心当たりがある」とのメールが届く。
「柚希」と対面した「雨穴」は「その家の住人に夫が殺されたかもしれない」という衝撃の告白を受けることになり、謎の物件についてさらなる調査を進めることになる。調査が進むごとに、それらの先にある恐ろしい事実に直面していく…
謎の間取りの家と、そこに関わる人物たち、事件を著者の「雨穴氏」の体験をベースに綴られていくモキュメンタリーミステリーとなっています。
複数の事件や謎、違和感が複雑ながらも確実に繋がる先に待つ、恐ろしい事実までノンストップで体験していただきたい作品です。
「変な家」はどんな人にオススメできるか
この作品はこのような人に強くおすすめしたい作品です。
- 間取りや建築物が好きな方
- 謎を追うミステリーやホラーが好きな方
- 陰謀論や都市伝説系の話などが好きな方
- 活字のみの作品は苦手な方
「変な家」は間取りから感じる謎を追うという独特なテーマから、間取り図や建築物が好きな方に強くオススメしたい作品です。
特、普段ミステリーやホラーを読まなくても、間取り図を見る視点を持ち合わせているなら雨穴氏と一緒に謎を解き進めることでなおさら「その面白さ」がわかる作品でしょう。
もちろん、普段からホラーやミステリーが好きな人、陰謀論や都市伝説といったオカルトの話が好きな人にももちろんオススメですが、最もオススメなのは、これらのジャンルに興味はあるけれど、活字のみの作品は苦手な方です。
例えば、以下のように書籍内には間取り図の画像があることで、視覚的にイメージをとらえられます。
小説冒頭にまず表題となる家の間取り図を見せて、読者に問いかけることでぐっと引き込む。
会話や調査で物語が進む中で出てくる注目ポイントも同様に、その都度に印をつけた間取り図を提示してくれます。
(引用元:飛鳥新社HP「「変な家」」試し読み(2章冒頭まで))
加えて、セリフの上には該当する登場人物の名前が振られていることで、誰がどのように、どの部分に対して話しているのかが視覚的にダイレクトに伝わってきます。
このような構成の小説作品はかなり独特です。
「変な家」の感想・見どころ
※以下、ややネタバレを含みます。
普通に見えるものの違和感その先にある謎が線で繋がる心理的恐怖が見事
ぱっと見の間取り図では何の変哲のない一軒家に見えても、一つの違和感を見つけ出すと次
ハッピーでもバッドでもない、読み手の情緒を掌握する展開とラスト
物語は雨穴氏や栗原氏の推理と仮説通りなのか、はたまた別の展開になるのかという過程も含めて読者をハラハラさせる要素が多く盛り込まれています。
物語の行く末は是非とも目に焼き付けていただきたいですが、1つだけ言えるのはこの物語の行く末は決してすべての人間にとってハッピーエンドでもバッドエンドでもないということ。
そのような様々なものに思いを馳せることで読書の情緒を掌握する独特の世界観が見所です。
漫画版、4年越しの【完全版】を以て120%の完成度の物語となる
本作は先ほど挙げたオモコロ版を経た書籍版ですでに非常に高い完成度と面白さを誇る傑作小説です。
しかし、漫画版では漫画特有の人物の動きや家そのものを絵として描くことで、視覚によるさらなる間取りのイメージのリアルさを補完することができます。
そして、新録の【完全版】の動画をもってこの作品は100%を超えた120%の作品として物語が完成する、ということです。
きっと書籍版のみではどこか払拭しきれずに残っていた不穏さや違和感がすべて取り払われることでしょう。
【完全版】鑑賞後に湧き上がる感情は、是非ともあなたの目で結末を確かめることでお確かめください。
著者:雨穴のプロフィール
- 名前:雨穴(うけつ)
- X:https://x.com/uketsuHAKONIWA
- YouTube:https://www.youtube.com/@uketsu
- 経歴:本名、生年月日、出身地不詳の前進黒タイツに仮面をつけた格好に
加えて、加工された声も印象的な謎の多いホラー作家。
ペンネームの由来は「全く関係ない言葉をふたつ並べてみただけ」とのこと。
2020年にwebメディアオモコロに投稿された記事と動画で公開された『変な家』が話題を呼び続きを含めて書籍化、大ヒット作品となる。
同時にYouTuberとしての側面もあり独自性のある画像を用いた表現技法や癖の強い登場人物のやり取り、緻密な謎と伏線が織りなす世 界観は多くのミステリー&ホラーファンに支持されている。
183.5cmと長身で、楽曲を自作したりするなど多彩な面を持つ現代を代表する鬼才作家である。
2020年代のホラー界を象徴する作家の代表と言って差し支えのない存在となっているのが雨穴氏です。
同時に、小説家だけでなく様々な分野でクリエイターとしての能力を発揮していることから、既存の枠を超えた表現方法に常に挑戦している姿勢はこの先の作品にも期待したい存在です。
著者:雨穴の別作品
雨穴氏は「変な○○」というタイトルで複数の書籍を出版されており、シリーズ累計850万部を超える大ヒットを記録しています。
どの作品も、決して目を離せない内容ですので併せてご覧いただきたく思います。
「変な絵」/双葉社(2022年)
雨穴氏の放つ、「変な○○」シリーズの第2弾作品です。
前作「変な家」のモキュメンタリーミステリーな作風とは一転、主人公は大学生でオカルトサークルに所属する佐々木は後輩の栗原から『七篠レン 心の日記』なるブログの存在を教えられブログに投稿されていたイラストと『あなたが犯した罪』を許しませんという言葉の意味を追うストーリー小説になっています。
テイストは確かに「変な家」とは異なりますが、、雨穴氏のテイストが炸裂する新たなミステリー体験を是非ご堪能下さい。
「変な家2 〜11の間取り図〜」/飛鳥新社(2023年)
「変な○○」シリーズの第3弾作品にして、「変な家」の続編にあたるモキュメンタリーミステリー小説となっています。
「変な家」を出版し大きな反響を呼んだ雨穴氏のもとに寄せられた「11の間取り図」について、雨穴氏と栗原氏が、謎を解き明かしていく物語となっています。
「変な地図」/双葉社(2025年)
「変な○○」シリーズの第4弾作品にして、3年ぶりの完全新作です。
「変な家」、「変な絵」栗原氏が主人公として登場し、栗原氏の祖母が残した不審な古地図の謎を追う中で訪れる村で起きる不審な事件や過去、土着信仰にも似た不気味な思惑なども絡み合う、本格地図ミステリー作品となっています。
「変な家」と併せておすすめしたい作品はこちら
著:小野 不由美「残穢」/新潮社(2012年)
モキュメンタリーホラー小説の代表作とも言える、小野 不由美氏の著書。
「変な家」同様にライターが土地や建物というものをテーマにした調査を進めていくというモキュメンタリー作品であり、本当に怖いホラー小説としてしばしば最高傑作と称されることもある作品です。
この作品の真の恐怖は、読み終えた後まで続く他人事ではなかったという絶望感です。
著:背筋「近畿地方のある場所について」/KADOKAWA(2023年)
ホラー小説家の背筋氏のデビュー作にして代表作であるモキュメンタリーホラー作品です。
2024年版「このホラーがすごい!」国内編1位を獲得していることからもわかるように非常に評価が高く、2020年代のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)ホラーの傑作のひとつであると言えます。
雨穴氏と背筋氏はデビューや話題になった時期が近く、業界を牽引するホラー作家として「このホラーがすごい! 2024年版」にて、梨氏も交えた対談を行うなど、お互いに意識しあう関係性でもあります。
著:和田正雪「特定しないでください」/小学館(2025年)
心霊のホラーのコワさではなく、人間が持つ狂気、悪意、嫉妬などが渦巻くヒトコワミステリー小説です。
明言こそされていなませんが、私(著者)が「流血事件を起こして失踪したアイドルを追う」というモキュメンタリー形式の作品となっています。
SNSの活用や実際に関係者に足を使って情報を集める中で徐々に真相が明らかになるも最後の最後まで、その結末の様相がつかない怖さは必見です。
著:矢樹純「或る集落の●」/講談社(2025年)
元は著者の矢樹純氏が個人出版小説としてKindle向けに刊行した作品で、著者の出身地でもある青森県を題材にした、「P集落」にまつわる短編が7つ収録されている、土着信仰や因習をテーマとした怪談小説です。
いわゆる都市や、人の多い土地から隔離された或る集落にて集中して起きている出来事が、たまたま起こっていることではなく奇妙なつながりがあることをじわじわと感じられる作品となっています。
土地にまつわる因習や怖い話という点で「変な家」との共通点を感じる作品としてこちらでご紹介いたしました。
伏線回収系ホラーが好きならご覧いただきたい作品でもあります。
それでは、本日の深淵の案内はここまで。
無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。
ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。
また、この場所でお待ちしております…。







