アンソロジーホラー小説「最恐ホラー 呪われた図書館」を紹介・レビュー※微ネタバレ含む|深淵の記録:5
みなさま、ようこそ深淵境界線へ。
案内人のフチと申します。
今回お見せする深淵は、背筋氏と平山夢明氏の共演によるアンソロジーホラー小説「最恐ホラー 呪われた図書館」です。
2023年に「近畿地方のある場所について」にて鮮烈なデビューを果たした背筋氏と、1993年より数多くのホラー小説や実話怪談作品を出版してきたベテラン作家平山夢明氏が競作し、同一の「図書館」をテーマに書き下ろした作品が掲載されています。
64ページという短さでサクッと読み切れる短編となっておりますので、読書の時間が確保できない方にもしっかりとオススメしたい作品です。
また、きちんと誤解のように申し上げると、本作はページ数こそ少ない物の990円という文庫本以上の価格となっていて確かに割高感は否めませんが、両作者の世界観のファンであるならば必読と言える内容になっています。
- 「最恐ホラー 呪われた図書館」とはどのような小説か
- 著者:背筋氏と平山夢明氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
- 「最恐ホラー 呪われた図書館」と共におすすめできる作品
それではともに深淵を覗いていきましょう。
「最恐ホラー 呪われた図書館」とは
- タイトル:「最恐ホラー 呪われた図書館」
- 著者:背筋、平山夢明
- 出版社:講談社
- 価格:定価 990円(税込み)
※以下、短編のあらすじのためややネタバレ含みます。
この作品には以下の2作品が収録されています。
- 著:背筋 「笑う女が立っている」
- 著:平山夢明「そして家族全員、焼きそばス」
それぞれについてあらすじ、感想・見どころ、をご紹介いたします。
著:背筋 「笑う女が立っている」のあらすじ(全29P)
ブラック企業にて疲弊し、適応障害となり退職し現在無職である主人公の岸井は、自宅アパートのドアスコープ越しや、食事を調達しに出かけたコンビニで口を大きく開けた笑う女を視界でとらえるようになる。
夏場の暑さと女の姿を避けるため、暇つぶしも兼ねて図書館で読書を過ごすようになるが、そこで突然作品の内容を大声で読み上げる男に遭遇する。
奇怪な目で男を見るが、それ以降岸井が本を読んでいると、本の内容には関係ないはずの笑う女が立っています。
まさに日常浸食系ホラーというにふさわしい背筋節が炸裂した作品になっています。
著:平山夢明「そして家族全員、焼きそばス」のあらすじ(全32P)
人里離れた図書館で老人たちに向けて7日間朗読をすれば50万円という高額の闇バイトを紹介される。
怪しいと思いつつもこれまでの闇バイト生活に区切りをつける意味も込めて参加することにする男。
アルバイト最後の日に読むことになった本は、文章が支離滅裂でおかしい。本の最後に書かれた「家族全員、焼きそばス」とは一体何なのか。
昨今、現実世界でも話題になることが多い「闇バイト」を今回のテーマである「図書館」と絡ませたホラー作品となっています。
「最恐ホラー 呪われた図書館」の感想・見どころ
「笑う女が立っている」の感想・見どころ
自身の日常が着実に侵される浸食系ホラー
主人公の現状はなかなか特殊ではあるものの、日常が徐々に狂い始めていく様は読んでいるこちらも他人事ではないと思わされる怖さあります。
もし、精神的に弱っている状況で同じような目に遭遇したら、きっと正気じゃいられなくなってしまうだろうということを自分に置き換えて想像すると、ゾッとします。
背筋節とも言える読み手をも巻き込む不条理さが炸裂している
代表作「近畿地方のある場所について」、「口に関するアンケート」にも通ずる手法、背筋氏が得意とする読み手の読書体験までも含めて一つの恐怖を作り出すモキュメンタリ―ホラーのアプローチがストーリー小説の今作にもしっかりと盛り込まれてていて、上記2作のファンであれば一読の価値ありです。
「そして家族全員、焼きそばス」の感想・見どころ
何が起きているのか考察する余地すら与えない平山ワールド
平山夢明氏が得意とするグロテスクさ、日常の不穏、心理的な追い
そしてラストに待つ狂気の結末を見た時に感じる気持ち悪さ、後味の悪さは平山氏以外には出せないものになっています。
「なぜ?」、「何が?」、「どのように?」すら読み取ることすら難しい、わからないものこそ恐怖であることが全面に押し出された問題作です。
話の根本や謎についてひたすら悩まされる構図になっていますが、これこそが平山氏の狙いだと感じます。
著者:背筋のプロフィール
- 名前:背筋(せすじ)
- 経歴:2023年1月に小説投稿サイト「カクヨム」にてネット版「近畿地方のある場所について」を投稿し話題に。同年8月に書籍化し小説家デビューを果たす。
同作は2024年「このホラーがすごい!」国内編1位を獲得し、ホラー作家としての地位を確立。
ホラーゲーム「SIREN」のシナリオライター佐藤直子、映像監督の西山将貴とともにホラーユニット「バミューダ3」を結成し、2025年夏には世紀末を題材にした体験型展示イベントである「1999展 -存在しないあの日の記憶-」を開催し、これも大きな話題を呼んだ。
著者:平山夢明のプロフィール
- 名前:平山夢明(ひらやまゆめあき)
- 経歴:1961年11月17日生まれ 神奈川県川崎市出身
法政大学第二高等学校出身、法政大学中退
学生時代よりホラー映画の自主制作をするなどホラーに熱中し、「デルモンテ平山」の名義でホラー映画論評を行う中、1993年から実話怪談を大事とした執筆活動も並行して行い、1994年に「異常快楽殺人」で作家デビュー。
以降はホラー作家、実話怪談収集家、映画評論家など多方面で活躍する。
作品の特徴はグロテスク、日常の不穏、登場人物を精神的に追い詰める不条理さや、転じて緻密なロジックが組まれた謎を含む作品など独自の世界観など、ホラー作家として長年にわたり確固たる地位を確保している。
著者:背筋の別作品
「近畿地方のある場所について」/KADOKAWA(2023年)
背筋氏のデビュー作にして一躍ホラー界を席巻した代表作です。
雑誌編集者をしている著者「私(背筋)」の友人である若手ライターの小沢が突然行方をくらませた。
彼はどうやら新しい記事の題材にとある場所にまつわる内容を調べていたらしい。そこは「近畿地方のある場所」とまでしかわからないが、彼の残した情報を手掛かりに調査を行い、それを公開することでこれを読んでいる読者から情報を提供してもらえる、ゆくゆくは彼の行方を掴めるのではないかと考えた「私」。調査を行う中で様々な事件や情報が結びついてゆき、そして「近畿地方のある場所」がどこにあるのかが徐々に明らかになっていく。
しかし、その進む先で直面する恐ろしい事実。
そして物語の結末を、知った時に著者と読者が目にするものとは一体⋯。
2020年代のモキュメンタリ―ホラー作品としての最高傑作のひとつとしてもあげられる傑作です。
是非とも、巧妙に張り巡らされた仕掛けと衝撃の真相を目の当たりにして、恐怖を感じていただきたいです。
「口に関するアンケート」/ポプラ社(2024年)
縦115ミリ×横85ミリの小さなサイズ感と63ページという短編に恐怖を詰め込んだ衝撃ホラー作品。
あらすじ
心霊スポットされる墓地で肝試しを行う大学生4人。そのうちの1人が翌日失踪してしまう。
後にその場所を訪れて怪奇現象に出くわしたオカルト研究会の大学生2人も、その事件に関わることとなり、失踪者を除く5名それぞれの証言を展開していく形で物語が始まる。
登場人物のインタビューが主体となる形のお話ですが、最後の「口に関するアンケート」のページを読むまで真相がわからない構成はすさまじいです。
著者:平山夢明の別作品
「異常快楽殺人」/KADOKAWA(1994年)
平山氏のデビュー作にあたるノンフィクション伝記作品で、実在したシリアルキラー7人に関する資料について、その生涯と犯行がこの一冊にまとめられています。
「超」怖い話シリーズ/勁文社文庫、竹書房文庫(1993年~)
平山氏の趣味の一つでありこちらも得意とする、実話怪談がまとめられている作品です。
作家デビュー作品としては「異常快楽殺人」が該当しますが、執筆作品としてはこちらが最初の作品ですので、平山氏の原点を知りたい方で純粋なホラーを楽しみたい方はまずはこちらの作品がオススメです。
ダイナー/ポプラ社(2009年)
漫画作品化、実写映画化もされたことで知名度があるこちらの作品。
こちらはホラー要素よりも裏社会をテーマにした人間の黒い部分、バイオレンスさを前面に出した長編作品となっています。
「最恐ホラー 呪われた図書館」と併せておすすめしたい作品はこちら
著:小野不由美「残穢」/新潮社(2012年)
モキュメンタリ―ホラー小説の代表作とも言える、小野 不由美氏の著書。
背筋氏も影響を強く受けたと語っている作品であり、土地に根付く怪異が人たちが意図しないうちに無条件に伝播し、襲っていくという不条理さを持った作品です。
この作品の真の恐怖は、読み終えた後まで続く他人事ではなかったという絶望感です。是非とも、こころしてお読みください…。
著:鈴木光司「リング」/KADOKAWA(1991年)
ジャパニーズホラー作品の代表作であり、映画作品としても超有名作品の「リング」もオススメです。
見た人間は7日後に死ぬという奇妙な映像が収められているビデオデープ、通称「呪いのビデオ」を介して呪いの元凶である貞子が人々を無差別に巻き込んでいくという作品、
著:梨「かわいそ笑」/イースト・プレス(2022年)
新進気鋭のホラー作家、梨氏の衝撃のデビュー作。
現代のネット怪談を紹介するような形でありながら、映画「着信アリ」や「リング」に代表されるジャパニーズホラー、伝播系ホラーの要素も多分に含み、読者に語り掛けるかのように展開されていくストーリーは気づいたらその世界の中に入り込んでしまう独特の雰囲気があります。
それでは、本日の深淵の案内はここまで。
無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。
ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。
また、この場所でお待ちしております…。





