みなさま、ようこそ深淵境界線へ。

案内人のフチと申します。

今回お見せする深淵はホラー短編集「或る集落の●」です。

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著者の矢樹純氏が満を持して世に放つ、土着信仰・因習をテーマにしたホラー短編集です。

フチ
フチ
これぞ日本の怪談、というものをしっかりと現代まで進化させた

このアーカイブを読むとわかること

  • 「或る集落の●」とはどのような小説か
  • この小説「或る集落の●」がオススメな人
  • 著者:矢樹純(やぎじゅん)氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
  • 「或る集落の●」と併せておすすめできる作品

それではともに深淵を覗いていきましょう。

或る集落の●」とは

  • タイトル:「或る集落の●
  • 著者:矢樹純(やぎじゅん)
  • 発売日:2025年7月16日
  • 出版社:講談社
  • サイズ:単行本
  • ページ数:218ページ
  • 価格:定価 1870円(税込み)
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或る集落の●」のあらすじ

第1章「べらの社」

都内で姉と共に暮らしていた「私」。しかし、姉は恋人の影響で前科がついてしまう。更生のために故郷である青森県のP集落にて親戚の下で暮らすことになる。
姉の下を訪れた「私」は、毎日のように土地神である『べら』を祀る社にお参りに行く様子を見て驚愕する。一体この集落には何があるのか。
P集落に根付く『べら』とは一体何なのか。土着信仰と因習が繋がる7つの物語の先に待つ結末とは…。

青森県にあるとある集落にまつわる土着信仰と因習をテーマにした短編が収録されています。

どの物語もその土地神の『べら』にまつわる話、『べら』の正体とはなんなのか、それに関わる人間たちがどのような末路を迎えるのかという緊迫感がすべてに通ずるものがあります。

フチ
フチ
どの話も後に残るドロドロとした不気味さ、気味の悪さはこれぞ日本の怪談という味があります…

ジャパニーズホラーとして現代に放たれた怪談として秀逸な作品です。

或る集落の●」はどんな人にオススメできるか

この作品はこのような人に強くオススメしたい作品です。

  • 日本の怪談が好きな方
  • 土着信仰や因習系ホラーが好きな方
  • 不気味さや気味の悪い話が好きな方

本作は上記の3つを総じて、THE・日本の怪談の雰囲気がお好みの方にオススメしたい作品となっています。

日本の古典怪談や伝承にも通ずるテーマを持つので、普段怪談話を好んで聴かれる方には是非オススメしたい作品となっています。

また、ある種の嫌悪感を抱かせるグロテスクな描写も含み、どの話にもついて回る不気味さ、気味の悪さなども持ち合わせているのが作品の怖さを倍増させており、このようなジャンルのホラー作品が好きな方にも間違いなくオススメできる作品です。

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或る集落の●」の感想・見どころ

※以下、ややネタバレを含みます。

これぞ伝統的な「怪談」の正統後継と呼べる怖い話の集まり

本作はやはり、土地に根付く怪異と人の信仰心が大きなテーマであり見どころとなっています。

現代の怪談でポピュラーな存在になったヒトコワや事件、不思議な話といったジャンルとは明らかに異なる心霊や更に上の神、仏に近いものとして扱われるぞましく、不可解で不気味な何かがかならずどの短編にも関わってくるものになっています。

どの要素も、古典的な怪談でも定番となっている題材ではありますが、まさにそれこそが本作をジャパニーズホラーの正当後継作品たらしめる醍醐味となっています。

フチ
フチ
長い怪談の歴史をまっすぐたどってきて、現代に生まれた作品だからこそ持つ恐怖は必見です。

実在する場所と実在しないかもしれない場所の題材が混在するパラドックス

本作はモキュメンタリーホラーとしての売り出しはされていませんが、舞台は青森県(著者の出身地)という実在する県であるとは作中で掲げられているうえで、さらにその中の「P集落」というとある閉鎖的かつ名前を伏せた場所となっています。

加えて、作品の軸である「べら」の存在はネット上では少なくとも本作にまつわるもの以外はヒットしない。

これにより、「P集落」と「べら」が実際に存在するのかどうか、という判断は読者側に投げられている、ブラックボックス的な存在なるのです。

しかし、「P集落」が閉鎖的環境であることを考慮すると、現地の住民以外には全く知られていない、知られてはいけない存在であるから検索しても出てこないと考えることもできます。

あると言えばあるし、ないと言えばない。その真偽そのものをあやふやにすることで、実話怪談とフィクションの間を行き来している作品と言え、まさに深淵の境界線を体現しているとも言えるでしょう。

作品の刊行のバックボーンすらも1つの伏線となる見事な構図

本作は元々、著者の矢樹純氏が2015年にKindle限定で個人出版(現在は絶版)という形で発表された作品です。

そして、この短編集の中の作品にて、とある女性から怪談系のラジオ番組に「自分の父の個人出版作品の内容が勝手に怪談として紹介された」と苦情が入る話あり、ここがこの作品の刊行までの背景に通ずるものがあります。

この作品自体が同様の経緯での刊行であることを事前に知っていても、後から知っても「もしかしてその本とはこのことか⋯?」と一瞬でも思わされるような見事な伏線となっているのです。

フチ
フチ
無論、これは私のミスリードや思い込みかもしれませんがこれも含めて作品の怖さを底上げしていると感じます。

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著者:矢樹純のプロフィール

  • 名前:矢樹 純(やぎ じゅん)
  • X:https://x.com/yagi_jun
  • note:https://note.com/yagi_jun
  • 経歴:1976年12月4日生 青森県青森市 弘前大学人文学科卒業
    2002年、妹である漫画家の加藤缶(加藤山羊)とコンビを組み、「加藤山羊」の共有名義で「合コン地獄変」にて漫画原作者としてデビューをする。その後、ストーリー漫画の『イノセントブローカー』の連載を経て、2009年に『女囚霊』にてホラー作品の原作も手掛ける。
    2011年に「Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件」にて『このミステリーがすごい!』大賞の最終選考に残りこれがデビュー作となる。
    2015年には続編となる『がらくた少女と人喰い煙突』や、『或る集落の●(まる)』などをKindle限定の個人出版という形で発表して執筆活動を継続。
    以降は短編や長編のミステリー・ホラー作品を出版し、賞を受賞するなど現在まで精力的な活動続けている。

漫画原作出身であることや、デビュー作以降は個人出版という形での執筆活動を続けて現在までミステリーとホラーを中心に魅力的な作品を多く出版されています。

決して順風満帆とはいかないながらも決して作家としての道を閉ざさなかった著者の生き様に脱帽と尊敬の念を抱きます。

フチ
フチ
著者のバックボーンも含めて作品を読むと、より一層没入感を味わうことができると感じます

著者:矢樹純の別作品

「撮ってはいけない家」/講談社(2024年)

著者の矢樹純にとって、初の長編ホラー作品として出版された作品です。

モキュメンタリーホラーの作成を依頼される映像制作会社に勤める主人公の男がロケ先となる家にて不可解な現象に多数遭遇していくというお話。

家の謎に迫る過程で様々な伏線が出てくることで、それらのつながりや結末を読者もともに考えていくミステリー的側面もある作品となっています。

フチ
フチ
恐怖の謎に立ち向かう勇気がある方は、是非ご一読ください…。

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「血腐れ」/新潮文庫(2024年)

撮ってはいけない家」とほぼ同時期に出版された、ミステリーホラー短編集作品となっています。

どの短編も「家族」をテーマにしたものでありながら、それぞれが持つ独自不気味さはいわゆるイヤミス(後味の悪いミステリー)の分類であり、非常に後に引くものがあります。

ヒトコワや怪異が家族の中に渦巻く恐怖を是非ともその目でご確認ください。

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「●●にいたる病」/講談社(2025年)

ミステリーゲーム「かまいたちの夜」のシナリオを務めたことでも有名な我孫子武丸氏のデビュー35周年を記念し出版された、我孫子氏の代表作の一つ「殺戮にいたる病」をリスペクトする作家人によるトリビュート短編アンソロジー作品です。

拡散にいたる病」で矢樹純氏も参加しており、その他の豪華作家人と共に独特の世界観を味わいたいミステリー・ホラーファンは必見です。

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或る集落の●」と併せてオススメしたい作品はこちら

ここでは「或る集落の●」とあわせてオススメしたい作品を紹介します。

著:雨穴 「変な家」/飛鳥新社(2021年)

とある一戸建ての間取り図の違和感から始まるモキュメンタリーミステリー作品。

2020年10月12日にウェブメディアのオモコロに投稿された後、YouTubeで本人出演の動画を公開するなどその独特の切り口や手法で大きな話題となり書籍、漫画など多くのメディアミックス展開し、謎解き要素と不気味な雰囲気で大ヒットし、2024年に映画化され多くの層に注目を集めた現代モキュメンタリー作品の代表作です。

不動産ミステリーではありますが、とある間取りの違和感からつながる先に、ある一族の風習があったという部分に親和性がある作品です

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著:背筋「近畿地方のある場所について」/KADOKAWA(2023年)

ホラー小説家の背筋氏のデビュー作にして代表作であるモキュメンタリ―ホラー作品です。

2024年版「このホラーがすごい!」国内編1位を獲得していることからもわかるように非常に評価が高く、2020年代のモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)ホラーの傑作のひとつであり、感染系ホラー作品としての完成度の高さも凄まじいです。

とある地方を中心に起きる事件、その土地特有の因習や信仰が渦巻く先に待ち受ける恐怖の真相を追うストーリーは「或る集落の●」と通ずるテーマを感じます。

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著:梨「ここにひとつの□がある」/ 角川ホラー文庫(2024年)

令和を代表する新進気鋭のホラー作家梨氏が放つ、「□(はこ)」にまつわるホラー短編が収録された小説作品です。

話によって題材となる「□(はこ)」は様々ですが、それらが最後に示す結末は是非その目で見届けていただきたいです。

あなたなりの考えを見つけて頂きたくなる、超考察系ホラーです。

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それでは、本日の深淵の案内はここまで。

無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。

ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。

フチ
フチ
決して飲み込まれて、境界線を越えないようにお気を付けください。

また、この場所でお待ちしております…。

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深淵境界線の案内人をしているフチと申します。 皆様をこの場所から深淵を覗く手助けをさせていただきます。