みなさま、ようこそ深淵境界線へ。

案内人のフチと申します。

今回お見せする深淵はホラー短編集小説「ここにひとつの□(はこ)がある」です。

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フチ
フチ
2024年に角川ホラー文庫より刊行された作品ですべての短編が何かしらの□(箱、はこ)を題材にした作品となっています。

著者である梨氏の世界観が炸裂している作品と言えるでしょう。

この記事を読むとわかること

  • 「ここにひとつの□(はこ)がある」とはどのような小説か
  • 著者:梨(なし)氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
  • 「ここにひとつの□(はこ)がある」と併せておすすめできる作品

それではともに深淵を覗いていきましょう。

ここにひとつの□(はこ)がある」とは

  • タイトル:「ここにひとつの□がある
  • 著者:梨
  • 発売日:2024年11月25日
  • 出版社:角川ホラー文庫
  • サイズ:文庫本
  • ページ数:256ページ
  • 価格:定価 770円(税込み)
  • 受賞歴:Amazon 角川ホラー文庫 売れ筋ランキング1位

唯一無二かつ新進気鋭のホラー作家梨氏が放つ異色の問題作と言える作品です。

フチ
フチ
著者の梨氏の世界観に心酔しきった時に感じる不穏さ怖さ、そこに付随する興味深さは必見です。

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ここにひとつの□(はこ)がある」のあらすじ

短編集という構造のため、こちらでは第一章のあらすじをご紹介いたします。

・第一章 「邪魔」あらすじ

二十歳を過ぎて東京に出てから久しぶりに故郷に帰省した主人公の男「上尾」。
地元の見慣れた道を散歩がてら歩いていると、とある家の前を通ると昔よく遊んでもらっていた一つ年上の「彩香」の大人になった姿で立っていた。
久しぶりに見た姿は最後に会った時と変わっており、戸惑うも彼女に家に招かれる。
煙草を吸うようなら仏間のマッチを使うかと聞かれた「上尾」は、「あなたの前ではマッチでタバコは吸いませんよ…」と言うと、「彩香」はマッチ箱にまつわる昔話を始める…。

一見するとが物語の根源にあるかはわからない入りの話ですが、第一章においてはこの「マッチ箱」こそがこの物語の意味を大きく持つことが読み進めていくごとに違和感と共にわかってきます。

同様にほかの章でもが物語の肝になる作品が8作品収録されています。

フチ
フチ
各章にてそれぞれのがどのように作用するかをお楽しみください…。

ここにひとつの□(はこ)がある」の感想・見どころ

※以下、ややネタバレを含みます。

実験作品的な要素をふんだんに使った新しい読書体験

梨氏の別作品である「かわいそ笑」にも代表される、図解や写真を用いて視覚を通じて考察する新しい読書体験の形をとっており、それによる作品への没入感や心酔感はかなり特殊なものを感じます。

ある種、梨氏の想像力、発想力を全力でぶつけられたかのような、著者が持つナルシシズムすら感じる作品です。

フチ
フチ
図を用いてクエスチョンを投げかけると、人間は自ずと謎に考えを巡らせてしまう生き物…、その性質をうまく利用された作品となっています。

各章の□がひとつとして同じもの、同じ働きをしない独立した怖さ

8章ある短編において、それぞれ物語の軸になる「□(はこ)」はほかの章と決して混じりあうことも、類似することもない構成となっています。

加えて、どの□も読者にとって決して遠い存在ではなく、普段の生活や日常にかかわりのあるものばかりであることで、上記の図解を用いた読者の考察も含めて作品への心酔を高める構成となっています。

フチ
フチ
自身のまわりにも、この□たちのように恐ろしいものにつながる要素があるのかもしれないと感じさせられる恐怖…、梨氏の目の付け所には感服します…。

最後に待ち受ける独立した短編集の共通点と繋がり

8章ごとに物語の軸となる「□」は確かに異なります。

では8章すべてをまとめた1冊の本として、単体として本書を見た時に、この全く異なり結びつかないと思っていた「□」たちの繋がりを読み終えた時に見ることとなります。

フチ
フチ
これ以上のことを言うのは、野暮ですね…是非ともご自身のその目で、結末をご覧ください…。

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著者:梨のプロフィール

  • 名前:梨(なし)
  • 経歴:2000年4月20日生 長崎県出身
    幼少期よりホラー作品、とりわけネット怪談への興味を示し、2ch板の洒落怖(死ぬほど洒落にならない怖い話を集めてみない?)に作品の投稿を開始する。
    2015年にはSCP財団に登録し2022年に『SCP-511-JP – けりよ』、『しんに』で高評価を取得。
    同時にnoteやオモコロにて自作小説を書き続け2022年に、22歳の若さで小説家・漫画原作デビューを果たした新進気鋭、新世代を代表するホラー作家の一人だ。
    特徴は恐怖感よりも不快感を残す描写と文章表現、加えて非常に執筆ペースが早いことと、2024年に「行方不明展」、2025年には「恐怖心展」といった体験型ホラー展覧会を開催して大きな話題も呼んだことからもわかる通り広いジャンルに向けた活動を行っている。

フチ
フチ
本書作成時に24歳、そして2026年現在26歳で常に新しいものを生み出し続ける鬼才、もしくは奇才さには畏怖の念すら抱かざるを得ません…。

著者:梨の別作品

「かわいそ笑」/イースト・プレス(2022年)

梨氏の衝撃の単独小説としてのデビュー作。

現代のネット怪談を紹介するような形でありながら、映画「着信アリ」や「リング」に代表されるジャパニーズホラー、伝播系ホラーの要素も多分に含み、読者に語り掛けるかのように展開されていくストーリーは気づいたらその世界の中に入り込んでしまう独特の雰囲気があります。

「ここにひとつの□(はこ)がある」とは異なる世界観ではあるものの、本作を読んで梨氏の世界観の虜になったすべての方この作品を読むことを強く推奨します。

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「コワい話は≠くだけで。」/KADOKAWA(2022年~2024年)全3巻

梨氏が22歳という若さで原作を担当したモキュメンタリ―ホラー漫画作品の傑作。

自身の書籍に図や写真を使う傾向の強い梨氏だからこそ、漫画だからできる表現というものを計算して表現されている作品となっています。

怪談を取材して漫画にすることになった漫画家景山五月氏(作画担当)が回を追うごとに取材することによる影響を受けていくこととなる様子は、ただのフィクションとは思えない作品となっています。

完結済み全3巻ですので適度なボリュームながら良質な恐怖体験を是非、お楽しみください…。

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「SCPって何ですか?」/HOWLコミックス(2024年~連載中)

梨氏のホラー作品との出会い、執筆の原点となったSCPを題材とした漫画作品です。

こちらの作品もイラストや日常シーンなどの入れ込みがうまく、ストーリーに緩急をつけた漫画ならではの怖さを味わえる作品でありただのホラーではなくオカルトや都市伝説に近い恐怖を味わうことができます。

2026年4月時点で全4巻が発売中です。

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「ここにひとつの□(はこ)がある」と併せておすすめしたい作品はこちら

「ここにひとつの□(はこ)がある」と同様の短編集形式のホラー小説をご紹介いたします。

著:原浩「身から出た闇」/角川ホラー文庫(2025年)

著者自身の執筆活動の中で起きたことを記録したモキュメンタリ―ホラーであり、そのジャンルの傑作のひとつと言える作品です。

著者の作中作創作短編集と連動する形で担当編集者3人に降り注ぐ恐怖と、角川ホラー文庫そのものを題材としたメタさがこの作品の醍醐味です。

短編集の奇妙なつながりと衝撃のラストは、「ここにひとつの□(はこ)がある」の展開がお好きであれば一読の価値ありの作品です。

序章、終章、あらすじすべてを含めてこの作品の異質さは後を引きます。

この作品こそ、読者が望んだ作品なのです。

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著:矢樹純「或る集落の●」/講談社(2025年)

元は著者の矢樹純氏個人出版小説としてKindle向けに刊行した作品で、著者の出身地でもある青森県を題材にした、「P集落」にまつわる短編が7つ収録されている、土着信仰や因習をテーマとした怪談小説です。

いわゆる都市や、人の多い土地から隔離された或る集落にて集中して起きている出来事が、たまたま起こっていることではなく奇妙なつながりがあることをじわじわと感じられる作品となっています。

複数の短編が最後につながる、伏線回収系ホラーが好きな方にオススメしたい作品です。

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著:背筋&平山夢明「最恐ホラー 呪われた図書館」/講談社(2026年)

梨氏と同時期に鮮烈デビューを果たした「近畿地方のある場所について」の著者である背筋氏と、ホラー小説界を40年近くけん引してきたベテラン作家の平山夢明氏の共演作です。

それぞれの視点で、同一の「図書館」をテーマに書き下ろした作品が掲載されており、お互いのつながりはないもの、「ここにひとつの□(はこ)がある」にも通ずる異なった軸を持つ「図書館」が共演する姿は必見です。

「図書館」以降も同様の形式でアンソロジー作が随時販売されるので、まずはこの第1作を読んで、著者によって異なる恐怖への価値観や解像度を是非楽しんでいただきたいです。

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それでは、本日の深淵の案内はここまで。

無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。

ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。

フチ
フチ
決して飲み込まれて、境界線を越えないようにお気を付けください。

また、この場所でお待ちしております…。

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フチ
深淵境界線の案内人をしているフチと申します。 皆様をこの場所から深淵を覗く手助けをさせていただきます。