ミステリーホラー小説 上条一輝「深淵のテレパス」を紹介・レビュー※微ネタバレ含む|深淵の記録:8
みなさま、ようこそ深淵境界線へ。
案内人のフチと申します。
今回お見せする深淵は小説「深淵のテレパス」です。
著者の上条一輝氏のデビュー作にしてホラー小説としての賞を複数獲得したベストセラーであり、本格ミステリー要素、そして登場するキャラクターの魅力も詰まった、エンターテインメント性を感じられる作品となっています。
- 「深淵のテレパス」とはどのような小説か
- 著者:上条一輝氏のプロフィール、他作品にはなにがあるか
- 「深淵のテレパス」と共におすすめしたい作品
それではともに深淵を覗いていきましょう。
「深淵のテレパス」とは
- タイトル:「深淵のテレパス」
- 著者:上条一輝
- 発売日:2024年8月9日
- 出版社:東京創元社
- サイズ:単行本
- ページ数:256ページ
- 価格:定価 1650円(税込み)
- 受賞歴:ベストホラー 2024年1位
このホラーがすごい!2025年 1位
「深淵のテレパス」はホラー作家の上条一輝氏のデビュー作にして代表作である、ミステリーホラー小説「あしや超常現象調査シリーズ」の第1作目にあたります。
元は「パラ・サイコ」のタイトルで、東京創元社にて作家の澤村伊智氏が選考委員を務めた創元ホラー長編賞を受賞した後、現タイトルに変更されて書籍化された作品です。
「深淵のテレパス」のあらすじ
会社の部下に誘われてとある大学のオカルト研究会の怪談イベント
に行ってからというもの、自室で汚水や異臭が突然発生するという超常現象と も怪奇現象ともとれる事象に遭遇したOLの高山カレン。藁にすが る思いで、YouTubeにて様々な超常現象の調査・解決をして いる「あしや超常現象調査」の二人組に解決を依頼することになる 。
その二人とはとあるイベント会社の上司と部下の関係にあたる芦屋晴子と越野草太である。
晴子曰く「この世の超常現象の類はショボい」というが、予想を超える現象の数々とその原因を調査することで物語は深淵へと進んで いくことになる。
設定の練られ方、登場人物たちの個性豊かさも、あらすじから伝わってくるようで、非常に目を引く作品となっています。
「深淵のテレパス」の感想・見どころ
※以下、ややネタバレを含みます。
先人たちのミステリー、ホラー作品へのリスペクトを随所に感じる
「深淵のテレパス」はいわゆるホラーに全振りした小説ではなく、超常現象、怪奇現象といったホラーとして扱われるものをミステリー的側面と思考で解決する、という作風であるため、その奥にこれまで世に出てきたミステリー、ホラー作品へのリスペクトや敬愛を感じるものもあります。
- ドラマ「TRICK」:魅力的なキャラクターとオカルト・超常現象的事件を解決していく作品
- 小説・ドラマ「ガリレオ」:一見、超常現象じみた不可解な事件を論理的かつ科学的思考で解決していく作品
- 漫画「ムヒョとロージーの魔法律相談事務所」:明確な悪意と不条理さを持つ怪異と対峙するファンタジーホラー作品
- 小説「残穢」や「
変な家」:土地、場所に根付く謎や怪異をテーマとしたらホ ラー要素のある作品
もちろん、あくまで私の想像ですので著者である上条氏が実際に影響を受けて執筆したかは定かではありませんが、これらのいわゆる先人にあたる作品からの影
キャラクターたちの魅力が物語にアクセントがある
上記の通り、「TRICK」や「ガリレオ」シリーズにも通ずる癖のある、魅力的なキャラクターが物語を大きく盛り上げてくれる作品となっています。
キャラクターへの感情移入や、大きく動くことで物語への没入感が生まれ、次を読み進めていくワクワク感が生まれるのも本作の魅力です。
長身で人目を惹く芦屋晴子、それに対して平凡ながらも晴子に振り回され、語り手として独特な視点を共有してくれる越野草太、その調査に協力するメンバー、怪奇現象の発生源と思われる少女など、キャラクターの魅力も併せてお楽しみいただける作品となっています。
実在する場所をモデルにしていることで読者のイメージがしやすい
本作は架空の大学での怪談から始まるなど舞台はあくまで創作ではあるものの、読む人が読めば「あ、ここがモデルになっているんだな」とわかるようになっています。
完全な架空の存在ではなく、実在する場所をイメージさせることで「超常現象が起きる元になった事件があの場で本当にあったのでは?」と読者に思わせることにも繋がる演出となっています。
著者:上条一輝のプロフィール
- 名前:上條一輝(かみじょうかずき)
- 経歴:1992年10月12日生 長野県上田市出身
早稲田大学を卒業後に会社員として仕事をする傍らwebメディアサイト「オモコロ」で加味條(かみじょう)の名義で作品投稿を始める。
後に雨穴「変な家」の影響を受けてホラー作品の執筆を開始し、「パラ・サイコ」のタイトルで第一回創元ホラー長編賞を受賞。同作 は「深淵のテレパス」に改題し書籍化、2024年に小説家デビュ ーを果たし、「このホラーがすごい!2025年版」、「 ベストホラー2024」にて国内部門1位を獲得するなど、今最も 勢いのある新進気鋭のホラー作家の1人である。
著者:上条一輝の別作品
ここからは上条一輝氏の本作以外の別作品を紹介いたします。
「ポルターガイストの囚人」/東京創元社(2025年)
「深淵のテレパス」の続編にあたる、「あしや超常現象調査シリ
前作で共に調査にあたったメンバーの他にも、新たな仲間が加わりさらに奇
「深淵のテレパス」を面白いと思った方なら必読の続編です。
「呪いは明るく輝いて」(『呪いの☒☒』収録作品)/幻冬舎文庫(2026年)
「あしや超常現象調査シリ
地方都市の区役所職員として地域の活性化に努める主人公の周りで起きる自動車事故や住民の流出の謎を追うストーリーです。
呪いの出どころ、呪いの伝播、呪いの効果、それらが地方都市に住む人々を巻き込み不幸を引き起こします。
結末を迎えた時に主人公が抱く思いと、読者が主人公に対して抱く思いに対比が生まれそうな作品です。
呪いの正体に気づいたときには、もう遅かったのです…。
「深淵のテレパス」と併せておすすめしたい作品はこちら
著:雨穴 「変な家」/飛鳥新社(2021年)
とある一戸建ての間取り図の違和感から始まるモキュメンタリーミステリー作品。
2020年10月12日にウェブメディアのオモコロに投稿された後、YouTubeで本人出演の動画を公開するなどその独特の切り口や手法で大きな話題となり書籍、漫画など多くのメディアミックス展開し、謎解き要素と不気味な雰囲気で大ヒットし、2024年に映画化され多くの層に注目を集めた現代モキュメンタリ―作品の代表作です。
著:小野不由美「残穢」/新潮社(2012年)
現代モキュメンタリ―ホラー小説の代表作とも言える、小野不由美氏の著書。
昨今のホラー作家も影響を受けたと公言される方も多い傑作で土地というものをテーマにした怪異について調べていくモキュメンタリ―ホラー作品です。
モキュメンタリ―に限らず、本当に怖いホラー小説としてしばしば最高傑作と称されることもある作品です。
この作品の真の恐怖は、読み終えた後まで続く他人事ではなかったという絶望感です。
著:原浩「火喰鳥を、喰う」/KADOKAWA(2020年)
戦死した自身の大叔父が日記に残した「ヒクイドリ、クイタイ」という言葉を、現在を生きる子孫たちが紐解いていくことで怪異や謎に巻き込まれていく、というミステリーホラー作品となっています。
2025年に劇場映画化されたことで大きな話題を呼びました。
ホラー要素もさることながら謎を追うミステリー要素が強く、作品のテイスト
それでは、本日の深淵の案内はここまで。
無事に深淵の境界線から現実に戻って来れましたね。
ただし、深淵を覗くときまた、深淵もこちらを覗いているのです。
また、この場所でお待ちしております…。



